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間引いたヒョロカブをこっそり育てる|ヤスノリさんのシェア畑

間引いたヒョロカブをこっそり育てる|ヤスノリさんのシェア畑
お散歩をこよなく愛するライターで、シェア畑ユーザーでもあるヤスノリさんに、シェア畑での野菜づくりの様子をおすそ分けしていただく「ヤスノリさんのシェア畑」。前回、あまりに美味しそうなカブの漬物に編集部も唸りましたが、そのカブに驚きの展開が...!




農をはじめて8ヶ月が経った。自分みたいなもんが野菜をまともに育てている、という状況が未だに面白い。


▲面白い絵だなあ

こんなの道の駅の朝市でしょ。生産者ぜんぶ僕。


さて、前回もちょっと書いたのだけど、少しのカブを育てている。そのうちのいくつかを収穫して適当に作ったカブの漬物がとんだごはん泥棒だった。めちゃくちゃ旨い。もっと食べたい。いま僕は「カブを食べたい」という純粋なモチベーションで畑へ足を運んでいる。自然とのふれあいとか子供への体験提供とかそういうのは一旦ちょっとどっか行っていただきまして、ただおいしいカブを食べたくて農をしている。ヘンゼルを食べたくて太らせようとする魔女のおばあさんと完全に一緒。お互い頑張ろうね!

ところで今回、カブの種を少ししか蒔かなかった。主力として植え付けまくった小松菜や水菜は食べきれずに友達にあげてしまった。これらを減らしてカブをたくさん育てれば畑の満足度は最大だったのだけど、種を蒔いた数ヶ月前の認識として、カブには何も期待しておらず、ただの数合わせであった。カブのポテンシャルを完全に見誤って、かなり後悔の残るポートフォリオとなった。カブだけに。株ならば買い直せばいいのだけど、こっちのカブの場合、リトライは来年だ。おい、来年て。待ちが長すぎる。農よ、お前、そういうとこあるぞ。そこだけ直してほしい。農、短期間でぐんぐん育つからめちゃくちゃ面白いんだけど、収穫が終わって反省点も出るじゃないですか、でも次回は来年。ええっ? そんな……! ってなる。リトライの回数が寿命に縛られている。まあ真面目な話、季節を感じながら旬の野菜を育てるところにも面白みがあるので、その融通の利かないところ含めて楽しくやっているのだけど。



ところで、カブは一箇所に4つの種を蒔くように教わった。そして、ある程度大きくなったときに間引く。最終的には勢いの良いカブ1つだけを残し、ヒョロヒョロしたやつは全部抜いてしまう(捨てるわけじゃなくて葉っぱとか食べられるらしいけど)。こうしてカブのエースは栄養を総取りする。競争に負けたヒョロカブたちは退場する。農の世界では当たり前に行われている間引きだけど、現代の感覚ではわりとギョッとする儀式かもしれない。みんな芽を出した素直で良い子なのに。ヒョロカブなりの長所だってあるかもしれない(右の葉っぱを虫に食われたら左の葉っぱも差し出す愛を持っているなど)。いまの社会を覆うリベラリズム的正義論から言えば、間引きはどうもしっくりこない。間引き、やめようか。そしたらあれだ、もっとたくさんカブ食べられるのにねえ。結局食べる話かよ。

ということで、正義論というよりは食いしん坊の発想で、抜いたヒョロカブを処分しないでこっそり育てることにした。幸い、小松菜や水菜を収穫したあとのスペースが空いていた。ライオス王の命に背いて皇子のオイディプースをこっそり生かすことにした従者はこんな気持ちだっただろうか。


▲死の運命にあったヒョロカブたちをこっそり育てる

ただ一点、僕が匿ったのは王の血を引く者ではなく、ただのヒョロカブである。しかも植え替えたために、なんだかうまく養分を吸えていないように見えた。まもなくそのエリアから死の臭いが漂ってきた。


▲あっこれ死んでますね?

植え付けが浅かったのかもしれない。水が足りないのかも。ごめんね、ぼくが、ごめんね。土もっとかぶせよっか? 枯れた葉っぱ取ろうねえ? ショパン聴く? 諦めきれずに死んだカブたちをいじり続けた。こんなのネクロマンサー農法ですよ。怖い怖い。もうやめよう、やめようよ。

死のエリアを見つけた菜園アドバイザーさんが「これは何ですか?」と尋ねてきた。もっともな疑問である。「カブをもっと食べたくて、間引いたものを、こう……」と告白した。

すると菜園アドバイザーさんから「あー、なるほど、育つと思いますよ、時間かかりますけどね」という意外な予言を授かった。いやいや、死んでますよ? えっ、ここからハッピーエンドルートあるの?

果たして2ヶ月後、なんか収穫できた。なんで?


▲えっ? 生きてたんだ? なんで?


▲なんでなんで?


▲ねえ、なんで?


▲よく分かんないけど漬けますね!


▲出た!

出たな二度目のごはん泥棒! 犯人は再び現場に現れる! 確保~ッ!!!!!

カブは旨い。いまや僕の一番好きな野菜のひとつになっていて、良く行くパスタ屋でもカブが入ってるものばかり頼むようになってしまった。でもこの漬物には敵わないんですよ。なんだこれ。旨すぎだろ。一体何入ってんだ?(塩と酢と砂糖とだしの素です)

しかしカブ、あの状態から持ち直すんだな。農はまだ全然分からない。

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