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茎ブロッコリーの苗を「かわいさ」で選んでみる|ヤスノリさんのシェア畑 vol. 1

茎ブロッコリーの苗を「かわいさ」で選んでみる|ヤスノリさんのシェア畑 vol. 1
6回にわたってお送りする「ヤスノリさんのシェア畑」。
散歩をこよなく愛するライターで、シェア畑ユーザーでもあるヤスノリさんに、愉快で楽しいシェア畑での野菜づくりの様子をおすそ分けしていただきます。




シェア畑を始めて半年が経った。
軽く後悔をしている。なぜもっと早く始めなかったんだろう、ということに。僕はいま、農が一番面白い。

ベランダの植物をことごとく枯らす僕の呪力は、畑の野菜には通用しなかった。家族で食べる分を作るという目的に限れば、農は簡単で楽しいことを知った。品種がいいのかもしれない。配布された教科書がいいのかもしれない。病気にあまりかからなかったのは運かもしれない。そのあたりは分からない。半年目の人が言うことだから、話半分に聞いて貰って構わない。


ただ事実として、8月は大量の夏野菜を収穫できた。特にナスが大成功した。この農園でナスを一番収穫したのは僕ではないかと密かに思っている。毎日採れるから人に配って回った。友達の子供が僕のことをナスと呼び始めた。確かに、僕が1人で10本のナスを持っていった場合、来訪者の構成要素はほぼナスだ。君の理屈も分かる。

ナス
▲ところでうちの家族は僕以外、ナスを食べない

アドバイザーさんから「これは立派だねえ、よく面倒みてたからねえ」と褒められた奇跡のナスは9月になっても勢いが衰えず、次々と花を咲かせては実を結び、枝は畑の歩道を半分塞いだ。「立派だねえ」は「邪魔だから切って」という意味だった可能性に今気づいた。すみません。先日片付けました。

それはそれとして、妙に自信のついた夏だった。トマト、キュウリ、ナス、ピーマン、サンチュ、オクラ、スイカ、初めて植えた野菜たちは、すべて満足のいく出来だった。もしかすると僕ってば農の天才かもしれないな。受験生に分けてあげたいくらい有り余る夏の自信。素晴らしいアドバイザーさんに手取り足取り教えてもらっていることを棚に上げ、そんなことを少し考えた。何かを始めて数ヶ月目というのは天狗になる時期なのかもしれない。それで、失敗をする。

夏野菜
▲今年の夏はめちゃくちゃ楽しかったな……



さて、9月も中旬になると秋・冬野菜の植え付けが始まる。特に茎ブロッコリーは、子供たちが楽しみにしていた野菜だ。うちの子供たちはなぜかブロッコリーが好きで、ドレッシングもかけずにもしゃもしゃと平らげる。とても素晴らしいことだけれど、一般的に子供が好むという話を聞かないので不思議だ。僕でさえ積極的に食べようとは思わなくて、ドレッシングでごまかしながら食べているふしがあるのに。どこが好きなんだろ。森をまるごと食べている巨人感かな? そこだけは僕もちょっと好きだな。「やめて! わたしたちの森を返して!」「ヌオ~ン! ヌオ~ン!」とか言いながら手づかみで食べると雰囲気がとても出る。

それで茎ブロッコリー。普通のよりもちょっと細めのブロッコリーだ。そういえばスーパーで見かけたことがあるなあ、買ったことないけど、なんて、最初はあまり気にも留めていなかったんだけど、よくよく聞けばこれが素晴らしい野菜で。普通のブロッコリーはモサッと大きなつぼみが出来てそれを収穫して終わりだけど、これはわき芽が次々に出来てつぼみをつける。細いブロッコリーを長い期間収穫できるというのだ。なに? そんな夢のような野菜があるのか? さっそく植え付けてまいれ。家族の希望を背負って、僕は一人で茎ブロッコリーの植え付けに向かった。いや君たちも来いよ。おかしくない? 子供と一緒に畑とか、食育とか、そういうのやりたいじゃん。来ない。

シェア畑の一角にはプランターに入った茎ブロッコリーの苗がたくさん用意されていて、気に入った苗を選んで自分の畝に植え付けるシステムになっている。じっくり見れば、苗にもいろいろある。もう葉を5,6枚つけて威勢の良いもの、まだ本葉が出ていないもの、葉の色が異様に薄いもの。そんな中、明らかに異質な苗が目に飛び込んできた。茎が「へ」の字に曲がっていて、ものすごくクタッとしていた。葉を伏せて、スースーと浅く息をしている感じがした。目が離せなかった。僕、この子にする! ぜったいこの子!

あとから思えば、これは子猫の選び方である。農は多く収穫することが目的なのだから、シンプルに元気な苗を選ぶのが正しい。しかし僕は、ひょろひょろした茎の下に手を添え、抱きかかえるようにして自分の畝へ運んだ。おかしなことをしている自覚はあった。支柱を立てる。「へ」の字に曲がった茎を強引に起こして麻紐で縛る。「へ」はかろうじて「く」となった。そのあとたっぷり水をやる。水の圧で「く」が「へ」になってしまった。麻紐を結び直して「く」に戻す。大丈夫、僕がなんとかしてあげる。なにしろ僕は農の天才だから。ナス生産量ランカー(僕調べ)だから。かくして、かわいさで苗を選ぶ馬鹿が誕生した。

茎ブロッコリーの苗選び
▲クタッとして可愛いから選んだ苗。一緒にがんばろうね!

実際のところ「く」の発育はたいへん良くなかった。大元が異常に曲がって遠回りをしているから背丈が伸びず、結果的に葉も少なかった。茎は相変わらず細く、もしかしたら栄養をうまく運べていないかもしれないと思った。そんなことを思っていたら数日後、アドバイザーさんに「ちょっと根が見えてるから、植え付けが浅いかも……」なんて言われて、あわてて土を盛った。僕の無知も確実に「く」の足を引っ張っているのだった。

茎ブロッコリーの苗植え
▲なんか土足りなくない? と言われた。確かにな!

それでも成長点から葉の赤ちゃんみたいなものが見え始めて、だんだんとリアルな葉になっていくたびに喜びがあった。茎も少しだけ太くなった気がする。だから「く」は「く」なりに成長しているのだけど、隣の人の茎ブロッコリーを見ると、上を向いた葉は生命力の体現のようで、その影は黒い炎のようで、それでもういちどうちの「く」を見ると、同じように空へ手を伸ばしているけれど、そこにはお遊戯会の決めポーズのような拙さを認めざるを得なかった。こいつを一人前に育てるぞ、という意思だけはあったのだけど、他の生命に介入できる方法というのは実はとても少なくて、追肥を真面目にやったことと、スマホで何回かマキシマム ザ ホルモンのぶっ生き返すを聴かせたことくらいだ。

茎ブロッコリーの成長
▲ヒョロヒョロしながら、大きくなっている。僕には分かる。

茎ブロッコリーをはじめアブラナ科の野菜には青虫などの害虫がつきやすいので、小さいうちはネットを張ることで防虫する。ネットが窮屈そうになる頃には、葉が食われても大した影響はないということでネットを取る。だからこの畑において、ネットを取ることは、茎ブロッコリーが一人前に育ったことを意味する。多くの茎ブロッコリーがベールを上げ、成人していった。うちの「く」を除いて。「く」は未だ、ネットの中にすっぽり収まっていた。まだ小さいので、虫に食べられたらひとたまりもないだろう。箱入り娘とはまさにこのこと。

茎ブロッコリーとネット
▲うちの娘に悪い虫がつきませんように

10月も終わりに近づいたけれど、「く」は相変わらずネットの中で安全に過ごしていた。変わったことといえば「く」に聴かせる曲が日食なつこに変わったくらいだけど、この日、僕は少し厳しく対処することにした。放っておくと斜めを目指す茎がずっと真上に向くように、麻紐で強めに矯正する。すると「く」の上部がネットに着いた。いつのまにか、ネットとだいたい同じくらいの背丈になっていた。成長の方向だけが違っていたのだ。

茎ブロッコリーネット卒業
▲グッと強めに矯正したらネットが狭い感じになった

そういうわけで「く」はネットを卒業した。そこからの成長が凄まじくて、もしかしたらネットによって阻害されていた何かがあるのかもしれない。「この天井が世界の果て……」みたいな気持ちが「く」にあったのかも分からない。ネットを取った途端、葉がムクムク出てきた。茎は竹竿のように太くなった。もっと早めに取ったらよかった。可愛い子はどんどん部屋から追い出すべきだ。

11月のはじめ、この地域に暴風警報が出た。外干しの洗濯物が2回転して吹っ飛ぶような風に、僕は「ちょっと畑を見てくる」という死亡フラグとして擦られまくったベタなワードをナチュラルに家族に言い残して畑を見に行ったんだけど「く」は何事もなかったようにそこに居て、お前……なんか、キャラ変わったな。すこしだけ水をやって帰った。

風に強い茎ブロッコリー
▲強風にも動じない強さを得る

「く」は大きくなった。根元は相変わらずくねっているのだけど、その形状のままたくましくなった。最近そのくねりが、しなやかな動物の躯体に見えることがある。何の動物だろう、と思っていたけれど、ようやく分かった。

茎ブロッコリー竜
▲うちの子めちゃくちゃかっこよくない?

龍だ。これは、茎ブロッコリーの龍ではないか。両翼を広げ天に咆哮する茎ブロッコリーを、あなたは育てたことあって?

最初の収穫をした。配布された農の教科書によると「頂花蕾(ちょうからい)」といって、茎の頂点にできる最初のブロッコリー。これが500円玉くらいの大きさになったら切る。すると周りからわき芽がどんどん出てきて、茎ブロッコリーの本格的な収穫が始まるのだという。毎回感動するのは、野菜が教科書通りに育つこと。これは品種の良さもあるし、知恵の蓄積でもある。農とは巨人の肩に乗って、先人に感謝しながら楽しむものだなあと思う。だから簡単だし、楽しい。

毎日大量にナスを収穫して「食い切れねえ……どうしよう」みたいになっていた日を思うと、たったひとつのブロッコリーというのは拍子抜けするような収穫量なんだけど、これが「く」の最初の作品だと思うと途端に愛しいものになる。情で苗を選ぶのも悪くない。

冬野菜収穫
▲冬野菜、最初の収穫

茎ブロッコリーはじまる
▲そして脇にブロッコリーが複数できはじめた。冬が始まったぜ……!


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