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小林 さん(ライター)

つちのこママの「田畑とつながる子育て日記」vol.4《おうちで畜産!?-お蚕さんがやってきた》前編

つちのこママの「田畑とつながる子育て日記」vol.4《おうちで畜産!?-お蚕さんがやってきた》前編
暑中お見舞い申し上げます。
2020 年の春は、新型コロナウイルスに始まり、子どもも大人も自粛生活を余儀なくされ、学校もお休み、さまざまなイベントも中止で、一言では言い尽くせない日々でした。この記事を書いている7月は、追い打ちをかけるように豪雨による災害に見舞われている地域もあり、心穏やではありません。新型コロナウイルスに感染した方、豪雨の被害に遭われた方には心からお見舞いを、そして、引き続き with コロナの毎日の健康と安穏を祈り申し上げます。

自粛生活とともにやってきた「お蚕さん」





さて、私が関わっている NPO くにたち農園の会では、今年5月から「おうちで蚕を育てよう!お蚕フレンズプロジェクト」と称して、数十名の方々と一緒に「蚕」の飼育をしながら、SNS 上で交流を深めるというイベントを開催しています。私と息子も初めて「お蚕さん」の飼育に挑戦しました。新型コロナウイルスの感染予防のための「自粛生活」の日々に、申し合わせたかのように、我が家にやってきた「お蚕さん」。卵から幼虫、成虫、繭と蛹、そして羽化とお別れまで、その愛と葛藤の日々を、今回は前編・後編2回に分けてレポートいたします。

●リンク:おおうちで蚕を育てよう!お蚕フレンズプロジェクト
https://www.facebook.com/events/3083521448357530

「天の虫=お蚕さん」は家畜だった。





ひょいと気軽なつもりで「蚕種(卵)」を 20 個いただいたものの、初めて飼うので右も左も分からず、ひとまず「蚕」に関する本やネットで情報収集。購入した本『カイコまゆからまゆまで』(著者:岸田功/あかね書房)の中に出て来る、“カイコは、糸をとるために人間がつくりあげた、昆虫の家畜なのです。”という文章がとても印象的で、今回の私の「テーマ」となりました。
つまり、お蚕さんは、私たちの「着物」や「絹製品(真綿等)」の原料である「絹糸」をとるために必要な「繭」を生産する「家畜」、人間が生産性と品質を向上するために品種改良を重ねてつくりあげられた「家畜」というわけです。夏休の定番昆虫「カブトムシ」や「クワガタ」とも違います。もちろん、野生の昆虫たちとも違って、自分の意志で餌を求めて逃げたり、飛んで行ったりしません。人間が餌を与え、飼育管理をしなければ死んでしまいます。そして「繭」を作ったら成虫になることなく「繭」の中で「蛹」のまま一生を終えるという天命を持つ、「天の虫」なのです。



さあ、たいへんだ!桑の木はどこにある?



と、情報収集で頭でっかちになったところで、私たちはまずはじめに「お蚕さん」の唯一の餌である「桑」探しから始めました。数十匹の幼虫を育てる責任は重大。さあ、たいへんだ!桑の木はどこにある?そもそも「桑」ってどんな植物だっけ?
自粛期間で図書館もお休みなので、インターネットで「桑」の画像を検索し、ネットで購入した植物図鑑を手に、近所に「桑」探しにでかけました。「桑」探しは難航するかと思いきや、あら、ここにも、あそこにも、「桑」「桑」「桑」「桑」「桑」「桑」。駐車場のすみっこ、街路樹の植え込みの中など、探せば探した分だけ、「桑」を見つけることができました「桑」の葉の形状には何種類かあって(写真上参照)、初めのうちは図鑑と照らし合わせながら試しに採取し、お蚕さんが食べるかどうかで確かめたりしましたが、今では、遠くからでもその枝ぶりで見分けがつくほど「桑」センサーが備わってしまいました。

あら、ここにも、あそこにも!には、理由がありました。





実は、私の活動拠点である国立市谷保では、明治時代は稲作と共に「養蚕」が盛んで、「お蚕さん」は農家さん達にとって貴重な現金収入だったそうです。ちなみに甲州街道は「絹の道」、この道につづく八王子市は織りや染めの産業が発展し「蚕都」と呼ばれていました。
やがて、昭和に入り急速な近代化や、石油繊維の開発、より安い原材料の輸入と、労働力や工場の海外進出などにより、「養蚕」を筆頭に日本人の「衣に関する農業(麻、綿、絹の産業)」は急速に衰退。私たちの暮らしから「蚕」は身近ではなくなってしまいました。
昭和初期の古地図を見てみると、自分が住んでいる地域に「桑畑」の地図記号の多いこと!おそらくその名残が今も至る所にまだ残っているのでしょう。まさか、「お蚕さん」の餌探しで、地域の歴史を知ることになるとは有り難きかな、「お蚕さん」。

日毎にかわいくなる「お蚕さん」





卵から無事に「けご」と呼ばれる幼虫が孵化したころ(写真右上)、ちょうどテレビで、皇室の雅子さまが皇居内の紅葉山御養蚕所で、「掃き立て」を行ったというニュースが流れました。私は初めて、歴代の皇后が蚕を飼ってその繭から生糸を作る「御養蚕」というお仕事を引き継いでいらっしゃることを知りました。
こうして、私の「お蚕さんライフ」は、期せずして、奥深く幅広く始まりました。幼虫が繭を作るまでの数週間は、餌(桑)の確保が一日のうちの大切な日課でしたが、「お蚕さん」の成長と食べっぷりは待った無し。1令目の頃は1日に 20 匹に対して2枚程度で済んでいた葉も、2令、3令と幼虫の成長段階に応じて、餌の量が増えて、1日に朝晩2回、さらには枝ごと刈り取らないと足りないほどになりました。
この地味に忙しい「桑の葉」摘みも「面倒」という感情は一切わかなかったのは、「お蚕さん」が成長すればするほどルックスがかわいくなっていくからでしょうか。「家畜」としての最後(繭のまま加熱して蛹を殺して、繭から糸を取ること)を考えると胸が苦しくなるほど愛着がわき、飼育が始まって2週間くらいから、繭になったらどうする?蛹は殺しちゃうの?そんな葛藤が始まりました。(―後編につづく)

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